「過去」は変えられるが、「未来」は変えられない
2015/07/22
過去を構成しているのは「記憶」と「記録」
過去は過ぎ去った時間であり、過去を変えることは出来ない。だから過去に囚われず、未来を変えていこう。
よく耳にする言葉ですが、実際には変えることが出来るのは過去のほうで、未来は変えることは出来ません。
まず過去を作り上げてるものは何か考えてみましょう。
1つは人間の脳にある「記憶」、もう1つが人間が文書などに残した「記録」です。
「記憶」のメカニズム
「記憶を引き出す」という言葉があるように、記憶はタンスに仕舞われている洋服のように人間の脳にストックされていて、必要なときに引き出す、思い出す、と思われがちです。しかし実際には記憶は引き出しているわけではありません。
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カリフォルニア大学准教授であり、記憶に関する研究を行っているシャーリー・ベルコウィッツ氏の説明を引用します。
When you remember, you’re actually recreating that memory using small clues. Memory, in researchers’ terms, is always “reconstructive.”
It’s not a record. You’re building the memory back up from little, tiny traces.
Shari Berkowitz, an assistant professor at California State University
あなたが記憶を引き出すとき、それは決められたものを引き出しているのではなく、あなたの脳内で小さなヒントや手がかりを元に過去の記憶を「再構築」している。
つまり思い出す=毎回新たに記憶を作り出しているということです。
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もし記憶がタンスに仕舞われている洋服のように不変のものならば、思い出す内容(引き出すもの)も毎回同じでなくてはなりません。
しかし何かを思い出すとき、その内容は時間の経過や感覚によって変わっていることがあると思います。あるいは他人に別の意見を言われることによって記憶が揺らいでしまったり、思い出したものが間違っていたと後で自分自身気づくこともあります。
そして間違っていたと思っていた内容が、実は正しかったという経験もあるはずです。
「記録」について
では記録についてはどうでしょうか。
記録というのは文字などを使って文書やコンピュータのメモリーに収められているものなので記憶と違って曖昧なものではありません。
人間と違って思い違いはないので、メモリー内の同じフォルダの同じファイルを開けば毎回同じものが出てきます。
それならば記録は正確なものでしょうか?
重要なポイントはコンピュータや文書に記録を行うのは、人間だということです。つまり文書を書く人、記録する人の都合に左右されます。
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例として少し不適切かもしれませんが、歴史の教科書問題などまさにその典型です。
歴史のように大勢の人が体験し、大勢の人が記録にしているものでもその内容に対して意見が分かれています。
つまり身近で起きる小さな出来事などそのことを気にかけている人が少人数ならば尚更記録は曖昧です。
もしその出来事を認識している数人が記録もせず、記憶もなくしてしまう、もしくはその出来事を間違って記憶してしまっていたら。
更にはその数人が死んでしまったとき、記録というものに残されてなかったら、その小さな出来事を知るすべはなくなってしまいます。
教科書に載るような大きな出来事、歴史でも同じことが言えます。
例えば歴史の授業で「何百年前に◯◯の乱という出来事がありました」と教わったとき、「過去に〇〇の乱という出来事があったから、自分たちはその出来事を知った」ように思えます。
しかし何百年前に起こった出来事を記憶してる人物は当然今の時代には存在しないことになります。
その出来事は「記録」に基づき伝えられていますが、その記録も長年伝えているうちに少し間違って伝わってしまったり、途中に瑕疵が存在したり、そもそも最初に記録として書き記した人が意図せず間違って書いてしまった可能性もあります。
伝言ゲームのように人づてに伝えていくものは、一番最初の言葉と最後の人が受け取った言葉は大きく異なってしまいます。
つまり「◯◯という出来事があったから、自分たちはその出来事を知っている」と思っていたものも、実は「自分たちが何年に◯◯という出来事があったと思っているから、その出来事はその時代に起こったことになっている」と言い換えることも出来ます。
まとめると
「過去」というものは昔起こった不変の出来事、ではなく過去というものを定義づけているのは「今」の時代に生きている自分たちです。
つまり「今」が遡って「過去」を決めている、という論理が成り立ちます。
「過去の出来事を映すタイムテレビ~(ドラえもん風に)」やタイムマシンが発明されればまた違った見解が生まれるかもしれませんが、過去を見たり、過去に行ったりすることが出来ない以上、過去を作り出しているのは今の自分たちです。
そして「未来」は変えられません。誰も「未来」が決まっている人はいないからです。
まだ何も決まっていないものを、変えることは出来ないです。
「未来」が決まっている、と思うのならば、それはあなたの脳が創りだしたイメージであり、「今」のあなたの考え方次第です。
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