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「タイムウォレット」を使ってみて気づいた3つの問題点

      2015/07/05


コンセプトは「待たされるほどお得」なポイントサービス

4月2日(木)のワールドビジネスサテライト(WBS)のトップニュースで紹介されていた、待ち時間をポイントにできるサービス「time wallet」。

ベンチャー企業の「H2H」は、待ち時間や滞在時間に応じて共通ポイントがたまる「タイムウォレット」という共通ポイントサービスを本格始動させました。車内に取り付けられた発信機ビーコンの電波圏に滞在した時間をスマホが計測。その時間がminというポイントに換算され、貯まっていきます。ポイントは提携する店舗でクーポンに交換して使います。たとえば、家事代行サービスを仲介する「エニタイムズ」では、ためた60minで60分のサービスを受けることができます。今後は病院や空港などで導入を進め、2017年には430万人の利用者、加盟店2万店を目指します。

http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/newsl/post_87484/

 

リンク先で実際にテレビで放送された動画が見れますが、主な流れは以下の通りです。

time-wallet2

 

サービスを提携しているタクシーに乗る

アプリを起動してチェックイン

車内に取り付けられた発信機「ビーコン」が感知

ビーコンの電波内に滞在した時間をスマホアプリが計測

滞在時間が「min(ミン)」というポイントに換算される

タクシーから降りて、ビーコンの電波外になるとチェックアウト

溜まったポイント「min(ミン)」を提携サービスのクーポンに交換

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とりあえず使ってみた

time wallet | タイムウォレット – H2H, Inc.

time-wallet

 

どんなことに対しても言えることですが、特に新しい発想のものに対して使ったこと、やったことがないのにあれこれ言うのは思考停止の始まりなので、まずはダウンロードしてみました。

 

time-wallet3

今のところ「ポイントを貯める」ことが出来るのは、ワールドビジネスサテライトでも紹介されていたグリーンキャブのタクシー、時間制スペースのコインスペースの2つだけでした。

 

開始したばかりのサービスなので仕方ないですが、今の段階ではポイントを貯めることが出来る場所は限定的です。

グリーンキャブのタクシーに乗ろうかと思いましたが、まだ導入されているタクシーは一部のみで見つけるのは至難の業です。

 

次に貯めたポイントを使うことが出来るサービスは以下の通りです。

timewallet4

 

宅配クリーニングサービスやマッサージサービスなど。

 

 

timewallet5

これもサービスが開始したばかりなので仕方ないですが、今の段階ではポイントのお得感は薄いですね。

あえてポイントを貯めなくても、ホットペッパーあたりで無料で提供してそうな内容です。

 

 

新規事業やベンチャーがほとんど失敗する最大の理由

ポイントサービス市場自体は飽和状態ですが、「時間制ポイント」は全く新しいサービスです。

 

新しいサービスの最大の壁は「消費者に新しい行動を取らせること」です。

新しいということは当然今までの生活習慣ではやらなかった行動です。人は親しみ慣れたものが大好きなのでに新しい行動を取らせることは並大抵のことではありません。

年配の方ほどその傾向は顕著ですが、若い人にも既存の行動パターンがあるためそこに新しいモノを持ち込むと大半の人が拒否します。

 

その拒否感を打ち破る方法を大雑把に分けると以下の3つです。

 

1. 大量の広告宣伝やマスコミ報道で一定の信頼性や流行を持たせること

2. 使わないと損!と思わせるほどのメリットを提示すること

3. 導入のハードルを低く設定すること

 

1の代表的な例でいうとソーシャルゲームです。「ゲームは購入後は無料で全部遊べる」既存の概念を打ち破るために、大量の広告や芸能人を起用したCMで射幸心を煽り「ゲームのアイテムや能力に対してお金を払う」という数年前までは考えられなかった行動を当たり前にしました。

 

3はジョブセンスの成果報酬型求人広告サービスがわかりやすいです。

当時ネットのアルバイト情報サイトはどこも掲載するだけで広告費が発生し、結果一人も採用しなくてもお金を支払わなければなりませんでした。

そこにジョブセンスが「掲載費は無料で採用時に成果報酬で費用が発生する」サービスを企業に提案しました。

 

企業からすると新しいシステムでどこまでのメリットがあるかわからなかったですが、「とりあえず掲載するだけなら無料だし、良い人が来なかったら採用しなければ良い」というハードルの低さで求人を集めました。

それと同時に求職者には、2の「使わないと損!」と思わせる採用祝い金を導入しました。

 

その結果、ジョブセンスを運営するリブセンスは急成長。東証一部に上場し、成果報酬型サービスも今や当たり前になりました。

 

 

タイムウォレット 普及の壁になる3つの問題点

時間制ポイントという新しい概念を消費者に浸透させるためには、現状3つの大きな壁を抱えています。

 

1. 使わないと損!と思わせるほどのメリットがない

まず貯めたポイントで交換出来るクーポンですが、正直現状では魅力がありません。このクーポン目当てにせっせとポイントを貯める人はいないでしょう。

ポイントを貯める場所もタクシーや時間制のスペースなど、ただその場にいるだけでコストが発生するものです。将来的には病院などにも導入するようですが、待ち時間の浪費や滞在時間が増えることに対する見返りとしては弱いです。

 

2. ハードルが意外と高い

このポイントを受けるためにはアプリを起動してその場でチェックインする必要があります。この行動のハードルが意外と高いです。

 

物理的には手間も時間もかかるものではないですが、家電量販店のポイントカードなどとは異なり、自分で対応する場所を探して、自分で気づいてアクションを取る必要があります。

もしこれが自分でチェックインする必要がなく、自動的に対応するエリアに入ったらチェックインしてくれるのならハードルが低く「とりあえずアプリを入れてみるか」という気持ちになりますが、自分でやるのは意外と面倒で忘れてしまうものです。

 

3. 待たされた上にアプリのチェックインを忘れるとイライラが2倍!

このサービスのコンセプトとして同社の代表も語っていますが「待ち時間や混雑などのイライラが、ポイントが貯まることによって軽減される」とありますがどうでしょうか。

このサービスに関するNeswpicksの記事コメントでも多くの指摘がありますが、忙しい人はわざわざポイントを貯めないしその時間をもっと有意義なことに使いたいと思う人もいます。

 

そして先ほど書いた通り、このサービスは自分で対応するサービスを探してアプリを起動しチェックインする必要があります。

待ち時間にイライラする人が、チェックインを忘れてポイントを得ることが出来なかったらどういう心理になるでしょうか。

 

「待たされた上に得られるはずのポイントを得られず損した!」とイライラが2倍になります。

サービスのコンセプトが逆にアダとなり、アプリを以後使わなくなってしまうかもしれません。

 

 

まとめると

 

サービスの発想は面白いですが、実際に使うことを考えるとメリットに対して手間やデメリットが上回っているように感じます。

「待ち時間で貯めるポイント」というコンセプトからして受け身のサービスなので、メリットを上げるよりデメリットを下げてもう少し自然にポイントが貯まるようにチェックインの必要をなくすなど、まだまだ改良が必要だと感じました。

 


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デジタルマーケティングまわりを得意としています。主な職務経歴は、Twitter、Instagram、Facebookなどソーシャルデータを中心としたビッグデータ分析、オンライン英会話事業の立ち上げと運営、SNS広告運用、SEO事業など。お問い合わせ、ご依頼などは以下のページをご覧ください http://fukuemon.me/about-me/

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