イノベーションオフセットとは？　成立要件と事例

2015/11/04 2015/11/06

イノベーションオフセットとは？

一般的に環境と利益は相反するものだと言われています。

環境部門はコストセンターとも言われ、環境に良いこと＝会社の利益に繋がるとは考えられていません。

しかしマイケル・ポーター氏の提唱した「イノベーションオフセット」によれば、厳しい環境規制をしくことによってイノベーションが誘発され、むしろ会社の利益に繋がると定義されています。

イノベーションオフセットとは、初期投資費用はイノベーションを誘発するような規制によって相殺できるという意味です。

イノベーションオフセットの成立要件

しかし環境規制を行えば必ずしもイノベーションオフセットが起きるわけではありません。

具体的には以下の3つの条件が必要です。

・適正に設計された環境規制

・手ぬるい環境規制よりも厳格な環境規制（もしくは厳しい環境）

・資源生産性の向上を促し、省エネ、最終的には省資源による利益を生み出すこと→値段は他と同等か安い

適正に設計された環境規制の実例

マスキー法

70年代の終わりに実施されたガソリン車に対する排ガス規制一酸化炭素、窒素酸化物などの排出量をそれまでの10分の1にする厳しい規制を乗り越えた日本車は、80年代以降の世界市場を席巻した。
ガス規制対策を怠ったアメリカ車は、法律の適用実施期間を先延ばしして、努力せず国際競争力を失っていった。

厳格な環境規制

手ぬるい環境規制よりも厳格な環境規制の方がイノベーションを誘発する。厳しい規制の元、企業は生き残るために様々な努力をするという意味。

資源生産性の向上を促し、省エネ、最終的には省資源による利益を生み出すこと→値段は他と同等か安い

・消費者は言葉では環境保護を掲げていても実際には値段が安いほうを選ぶ傾向

・環境パフォーマンスによってイメージが良くなれば、値段は同等の場合選ばれやすい

・環境イノベーションによって原材料価格の高騰や政府の汚染課徴金にも対応出来、安い料金で商品、もしくはサービスを提供できる環境

イノベーションオフセットの事例

オランダの花卉業界

オランダは、世界の切り花輸出の6割以上を占めている。
しかしオランダは花の栽培に必要な土地は狭く（日本の9分の1の国土）、気候も悪い。

その結果、農薬、除草剤、肥料によって土壌汚染や地下水の汚染が進んでいた。

この問題に対応するため「クローズドループシステム」（自己完結する循環型システム）を構築された。

クローズドループシステム

土と水の代わりにロックウール（人工鉱物繊維の一種）を使用。

この結果、害虫が発生するリスクが低下し肥料や農薬の必要性を減らした。

またクローズドループシステムの環境を維持するため、厳しい監視下で栽培し生育条件による変動も抑えられ品質が向上した。

更に特定のプラットフォームで生産するため、ハンドリングコストの低下に繋がった。

結果、環境負荷減少、コスト削減、品質改善、グローバル競争力の強化というイノベーションオフセットが成立された。

（参考文献：環境、イノベーション、競争優位 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文）

環境、イノベーション、競争優位 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文

この記事を書いた人
最新の記事

ふくえもん / FUKUEMON

デジタルマーケティングまわりを得意としています。主な職務経歴は、Twitter、Instagram、Facebookなどソーシャルデータを中心としたビッグデータ分析、オンライン英会話事業の立ち上げと運営、SNS広告運用、SEO事業など。お問い合わせ、ご依頼などは以下のページをご覧ください http://fukuemon.me/about-me/